「システム開発の発注を検討しているが、見積もりの依頼方法が知りたい」
「見積書をもらったものの、何を確認すればいいかわからない」
システム開発を依頼する際、発注前に見積り依頼をおこないます。しかし、初めてシステム開発を依頼する場合、見積もりの依頼方法や見積書の見方がわからず、適正な価格で見積りしてくれたか判断できないのではないでしょうか。
この記事では、システム開発における見積りの算出方法と内訳を紹介し、見積書でチェックすべきポイントを解説します。
システム開発の見積もりを依頼する前に、最初に以下のことを知っておく必要があります。
上記を理解しておくと、見積り依頼する際のポイントや見積書で見るべきポイントがなにか把握しやすくなるので、1つずつ見ていきましょう。
システム開発の見積り依頼をすると、依頼するシステム開発会社によって見積書の金額が異なります。同じ依頼内容でも、A社は500万円だったのにB社は800万円だった、というケースは珍しくありません。
見積書の内容・金額が異なるのは、システム開発会社によって提案内容が違うからです。開発手法や費用の内約・算出方法が異なると、自然と見積書の内容・金額も変わります。
そのため、システム開発の見積もり依頼をする際は、見積書がどのように作成されるか知っておく必要があります。
先ほど申し上げたように、見積書の出し方や費用の算出方法は、依頼したシステム開発によって異なります。そのため、見積書の内容はどうしても複雑になってしまいます。
見積書の見方を知らないと、何を確認したらいいかわからず、見積もり金額が適正な価格か判断できません。
事前に見積書でチェックすべきポイントを知っておけば、依頼内容が見積書にちゃんと含まれているかチェックできます。複数のシステム開発会社に見積りを依頼した場合なら、それぞれの見積書の内容を比較することも可能です。
システム開発では、見積もりを2回に分ける「2段階見積もり」をする会社が増えています。
2段階見積もりでは、契約前のヒアリング段階で見積もりの概算を作成し、契約後に要件定義をおこなって設計図を作成したうえで正式な見積書を作成します。
システムの開発にかかる金額を正確に見積もるには、システムの仕様詳細を記載した「設計書」が必要です。契約前の見積もりでは設計図がないため、どうしても大まかな金額しか算出できません。
そのため、見積もりを依頼したシステム開発会社が2段階見積もりを行う場合、 契約前の見積もりは必ずしも正確ではなく、 設計書ができるまで見積もり金額が変動する可能性があることを覚えておきましょう。
システム開発の見積もりを依頼する際、押さえておくべきポイントは以下のとおりです。
上記のポイントを押さえたうえで、システム開発会社に見積もりを依頼しましょう。
見積もりを正確におこなってもらうには、見積もりを依頼するシステム開発会社に必要な情報を提供することが大切です。
見積もりを依頼する前に、以下の情報を整理しておきましょう。
まず、何のためにシステム開発を依頼するのか、目的を明確にしましょう。
依頼する目的をシステム開発会社が理解できないと、期待していたものと異なるシステムが設計されたり、不要な費用が見積もりに含まれる可能性があります。
どのような課題を解決したいのか、システム開発で何を達成したいのか整理してください。
また、目的を伝えた際にシステム開発会社が正しく理解しているか、逐次確認することもおすすめします。
システム開発はさまざまな作業の集合体とも言えます。依頼したい作業の範囲を明確にすると、システム開発会社が見積もりに含める内容が把握しやすくなり、見積もり内容の精度向上につながります。
例えば、基本設計からリリース後の運用まで依頼する場合と、要件定義から総合テストまで依頼する場合では、見積もりのとり方は大きく変わります。
そのため、見積もり金額が正確に把握したいなら、依頼したい作業範囲は何か整理しておきましょう。
同時に、見積もり対象外の範囲も明確に伝えておくと、認識の齟齬やコストの増加も防げます。
見積もり項目と内訳は次章で詳しく解説するので、併せてご参照ください。
システムをリリースする期日が決まっている場合は、その旨もシステム開発会社に伝えておきましょう。
見積もりのとり方は、システム開発期間の長さでも変わります。期日を伝えない場合、システム開発会社は余裕も持ったスケジュールで見積もりをとり、見積もり金額が予算と合わない可能性が出てきます。
正確な見積もりをとってもらうためにも、システムをリリースしたい期日も事前に決めておくのがおすすめです。
可能であれば、開発したいシステムのイメージに近いサービス・アプリも事前に調査しておきましょう。
システム開発で依頼したい内容を文書や口頭で説明するのは難しく、認識の齟齬が生まれやすいのが実情です。
そのため、参考にしているWebサイトやアプリなどを共有すると、システム開発会社もイメージしやすくなり、正確な見積もりがとりやすくなります。
開発するシステムに必要な機能を明確にしましょう。この際に大切なのは「誰が見ても認識の齟齬が発生しない粒度で」明確にすることです。
例えば、一言で「通知機能」といっても、システムの中に通知させるのか登録メールと連携するのかなど、同じ機能でも具体的な開発内容は異なり、あわせて必要な開発工数も変わります。イメージを明確に言語化することで、見積もりの精度も向上します。
開発するシステムの内容によっては、パッケージサービスを利用することで開発費用を安く抑えられる場合があります。
システム開発会社に相談するか、指定のパッケージがある場合は見積もりを依頼する際に予め伝えると良いでしょう。
同じ内容の見積もりを依頼する場合でも、開発手法や作業工程、開発者の単価などはシステム開発会社によって異なります。
そのため、複数のシステム開発会社に見積もりを依頼し、見積もり内容を比較するのがおすすめです。具体的には、3~4社見積もりを依頼するといいでしょう。
見積もりを依頼する数が多すぎると、見積もり内容の確認に時間がかかり、システム開発の時期が遅れてしまいます。
ここでは、システム開発の見積もり項目と内訳を解説します。
今回は、一般的な見積書で記載されることが多い項目をまとめてみました。
見積書に記載される項目を理解しておくと、見積もり金額に何が含まれているか把握でき、見積もり内容が適正かどうか判断しやすくなります。
では、各項目と内訳を1つずつ見ていきましょう。
要件定義、達成したいゴールに対してシステムに必要な機能を検討するための費用です。
依頼したいシステムの方針や仕様を大まかに決めたい場合に発生します。
見積もり全体の目安:10~15%
デザイン設計は、Webサイトやアプリの画面に表示する情報やレイアウトを作成するための費用です。
UI(ユーザーインターフェース)とも呼ばれ、システムを利用する際の見た目に関する部分を依頼したい場合に発生します。
見積もり全体の目安:10~20%
設計費用は、要件定義で明確にした機能や、作成したデザインを技術的に実現するための設計作業にかかる費用です。具体的には、インフラの構造、データベース設計、画面設計、帳票設計などを行います。
見積もり全体の目安:15~25%
プロジェクトマネジメントは、定期的に行われる会議の進行など、プロジェクトのスケジュール管理にかかわる費用です。
プロジェクト管理やディレクション費と記載される場合もあり、システム開発を依頼するには必須の費用となります。
見積もり全体の目安:10~15%
開発費用は、実際にシステムを開発するためのエンジニアの人件費に関わる費用です。
システム開発の費用の大半を占めており、開発に関わるエンジニアの人数によって大きく変動します。
見積もり全体の目安:45~60%
システムテストは、開発したシステムの品質をチェックするために必要な費用です。
依頼したシステムが実装レベルまで完成されているか確認し、バグや欠陥が見つかった場合は修正し、テストを再度実施します。
見積もり全体の目安:10~15%
導入費用は、開発したシステムを導入するための費用です。環境の構築、システムの設定、切り替え作業などが含まれます。既存システムからの移行がある場合はデータ移行も発生し、特に重要な作業となります。
見積もり全体の目安:5~10%
導入支援費用は、システム導入時にユーザーが円滑に新システムを利用できるようサポートするための費用です。ユーザー教育、操作マニュアル作成、導入初期のサポート対応などが含まれます。
見積もり全体の目安:3~8%
購入費用は、システム開発・運用に必要なサーバー、ライセンス、サービス利用料などの購入にかかる費用です。サーバー、ネットワーク機器、OS、データベース、開発ツールなどが含まれます。
オプション費用は、基本的なシステム開発範囲を超える追加機能や特別な要求に対応するための費用です。高度なセキュリティ対策、特殊な連携機能、カスタマイズ要求などが含まれます。
旅費・交通費用は、プロジェクト遂行に必要な出張や移動にかかる費用です。顧客先での打ち合わせ、現地調査、導入作業、研修実施などで発生します。リモートワークの普及により減少傾向にありますが、重要な費用項目です。
運用保守費は、システム稼働開始後の継続的な運用・保守にかかる費用です。障害対応、定期メンテナンス、機能改善、技術サポートなどが含まれます。システムのライフサイクル全体で最も長期間発生する費用です。
見積もり全体の目安:15~25%
マイナビTechTus Egineeringの見積もりは通常、以下のようになっています。
| マイナビTechTus Engineeringの見積もり | 見積もり項目 |
|---|---|
| 要件定義見積もりに含む | 要件定義 |
| デザイン | |
| 設計 | |
| 開発見積もりに含む | プロジェクトマネジメント、進行管理 |
| 開発構築 | |
| システムテスト | |
| 導入 | |
| 発生する場合は別途案内 | 導入支援 |
| 購入 | |
| オプション | |
| 旅費・交通 | |
| 運用保守見積もりに含む | 運用保守 |
システム開発会社に見積書を作成してもらった場合、チェックすべきポイントを理解していると、見積もり内容が正確か判断しやすくなります。
チェックすべきポイントを1つずつ見ていきましょう。
単純に「安い」「高い」だけではなく、業界水準比で適切な単価が設定されているか、他社と比較して十分な工数が配分されているかなどを含めて確認することをおすすめします。
見積もり金額は作業範囲によって大きく変わるので、依頼したい作業が見積もりに含まれているか確認しましょう。
作業範囲の認識が異なると、契約後に追加費用が発生する可能性もあります。
見積もり金額が予算内であることも大切ですが、まずは必要な機能がすべて含まれているか確認してください。見積もり金額が安い理由で、依頼するシステム開発会社を選んでしまうと、必要な機能がない状態でシステム開発される可能性が高くなります。
同時に、不要な機能が見積もりに含まれていないかチェックしておきましょう。
先述の見積もり項目と照らし合わせて、見積もりに不足する項目がないかを確認しましょう。例えば購入費用、管理費用、調査・分析に必要な工数、ランニングコスト(一般的には、運用保守費用・月額のサーバー利用料・月額のサービス利用料など)が含まれているかを確認しましょう。
また、修正やトラブル対応費用が見積もりにどこまで含まれているかを確認することも大切です。
実際にシステム開発が始めると、途中で要件が変わることは少なくありません。
要件が変わるリスクを考慮せずにシステム開発を依頼すると、想定していない追加費用やプロジェクトの延期が発生し、トラブルの原因になる可能性があります。
そのため、要件変更のリスクに対する見積もりも含まれているか確認しましょう。
システム開発プロジェクトでは、発注者、開発会社、第三者ベンダーなど複数の関係者が関わるため、それぞれの責任範囲を明確にすることが不可欠です。責任の曖昧さは、トラブル発生時の対応遅延や追加費用の発生につながります。
一般的にシステム開発をする場合、開発したシステムの確認・承認は依頼者の責任となります。承認後の変更は追加費用が発生しやすいため、事前にイメージを明確にし、確認期間内に細部まで確認することが求められます。
検収・支払い条件は、プロジェクトの完了基準と資金繰りに直結する重要な契約条件です。曖昧な条件設定は、プロジェクト完了の判断で揉める原因となり、支払いトラブルにも発展する可能性があります。
検収期間や不合格時の修正範囲、支払いのタイミングと方法を確認しましょう。
最後に、見積もり金額の算出方法を解説します。
見積もり金額の算出方法はシステム開発会社によって異なりますが、よく用いられる算出方法は以下のとおりです。
見積もり金額の算出方法を理解していると、見積もり金額が適正な価格か判断しやすくなります。それぞれの算出方法を見ていきましょう。
類推見積は、過去のシステム開発の経験や、類似プロジェクトの情報から見積もる算出手法です。
システム開発の経験が豊富な担当者なら見積もりの精度が高く、かつ短時間で作成できる点がメリットです。
ただ、属人的な見積もり手法であり、人によって工数にばらつきが生じる可能性があります。
パラメトリック見積は、過去のデータや統計的に算出された係数から掛け合わせて見積もる算出手法です。
数値で見積もりを作成するため、担当者によってばらつきが発生しないことがメリットです。
ただし、過去のデータに依存するため、経験が少ない機能や新機能の見積もりの場合、精度が下がる場合があります。
工数積上げは、開発するシステムを細かいタスク単位で見積もって積み上げる算出手法です。
作業を詳細に落とし込んで見積もりを作成するため、抜け漏れが少なく精度が高い点がメリットです。
ただし、細部を検討のうえで見積もりを作成するため、見積もりの作成に時間がかかります。
プライスツーウィン法は、市場価格や競合他社の動向を分析し、受注可能性が最も高い価格を設定する見積算出方法です。
詳細な技術分析を省略できるため、短時間で見積もりを提示可能ですが、無理な価格設定や低価格による工数不足で、品質低下やスケジュール遅延のリスクがあります。
プログラムステップ法は、開発するプログラムの行数(ステップ数)を基準とした見積もり手法です。過去の開発実績から1ステップあたりの開発工数を算出し、予想されるプログラム規模に乗じて総工数を見積もります。
具体的な数値に基づいた客観的な見積もりが可能ですが、ステップ数重視により、効率的な技術選択や保守性などが軽視される懸念がある点には注意しましょう。
ファンクションポイント法は、システムの機能的な複雑さを数値化して見積もりを行う手法です。入力、出力、照会、内部ファイル、外部インターフェースの5つの要素を評価し、それぞれに重み付けを行って総合的な規模を算出します。
ISO標準に基づく客観的な評価で、見積もりの妥当性を確認しやすい一方、詳細な機能分析が必要で、見積もり取得に時間がかかることがあります。
標準タスク法は、開発工程を標準的なタスクに分解し、各タスクの標準工数を積み上げる手法です。要件定義、設計、実装、テストなどの工程を細分化し、それぞれに標準的な工数を割り当てます。
各工程の費用が明確で、予算配分を適切に判断しやすいですが、標準化により、革新的な解決策が提案されにくい傾向があります。
エキスパートジャッジメントは、経験豊富な専門家の判断に基づく見積もり手法です。技術的な専門知識と豊富な経験を持つエキスパートが、プロジェクトの特性を総合的に判断して工数を見積もります。
複雑な技術課題に対する専門的な判断を期待できますが、特定の専門家に依存するため、個人の知見により判断が異なる場合があります。
三点見積もりは、楽観値、悲観値、最頻値の3つの値を設定し、統計的に期待値を算出する手法で、不確実性を考慮した見積もりを行います。
幅を持った見積もりにより、より現実的な予算計画が立てられる点がメリットです。一方、統計的な計算が複雑で、見積もり内容の理解が困難な場合があります。
リスクベース見積もりは、プロジェクトに内在するリスクを特定・評価し、そのリスクに対応するためのコストを見積もりに含める手法です。技術リスク、スケジュールリスク、要件変更リスクなどを定量化し、コンティンジェンシー(予備費)として計上します。
リスクレベルに応じた投資判断をしやすいですが、リスク対応費用により、全体的に高額な見積もりとなる可能性があります。
システム開発の見積もりは、プロジェクトの成功に向けての第一歩です。精度の高い見積もりを依頼できれば、依頼したい内容が適正な金額で見積もられているか判断しやすくなります。
システム開発会社に見積もりを依頼する際は、以下のポイントを押さえておきましょう。
「どのシステム開発会社に見積もりを依頼するか迷う」「何社も比較する時間がない」という方は、マイナビTecTus Engineeringにご相談ください。見積書の見方がわからなくてもず、予算や目的をヒアリングさせていただき、最適な見積書を作成いたします。
見積書の作り方や相場情報など気軽な相談だけでもかまいません。ぜひ一度、当社にご相談ください。
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