オフショア開発はコスト削減や人材確保の手段として注目されていますが、失敗事例も少なくありません。
本記事では、オフショア開発でのシステム開発支援を提供するマイナビTecTus Engineeringが、実体験に基づく失敗事例や原因を解説し、成功に導くためのポイントをわかりやすく紹介します。
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オフショア開発とは、海外の企業や開発チームにシステム開発業務を委託する手法です。主に人件費の安い国を活用することで、コスト削減やリソースの確保を目的としています。特にIT人材不足が深刻な日本では、オフショア開発が有力な選択肢となっています。
しかし、言語や文化の違い、コミュニケーションの難しさから失敗に繋がるケースも少なくありません。まずはその仕組みと特徴を正しく理解することが、成功への第一歩です。
オフショア開発はコスト削減や人材確保の手段として注目されていますが、実際には多くの失敗事例も報告されています。具体的な失敗事例についてご紹介します。
オフショア開発において、最も多く見られるトラブルのひとつが納期の遅延です。契約時には明確な納品スケジュールが提示されていたにもかかわらず、進捗報告が不十分で、気づけば大幅に遅れていたというケースは少なくありません。
オフショア開発では、納品された成果物の品質が期待を下回るケースも見受けられます。
たとえば、設計通りに動作しない、不具合が多いなど、完成後に多くの修正が必要となる事例があります。結果として、初期のコストメリットが薄れ、国内での再対応が必要になることもあるでしょう。
オフショア開発を進める中で、当初の予算を大きく超えてしまうケースも少なくありません。見積もり時には安価に見えたプロジェクトでも、仕様変更や追加対応、コミュニケーションの手間などが積み重なり、結果的にコストが膨らむことがあります。
さらに、為替変動や現地の人件費高騰が影響する場合もあり、予算管理が難しくなる要因となります。
オフショア開発では、開発途中で連絡が取れなくなるという深刻なトラブルが発生することもあります。進捗確認の連絡に返信がない、定例ミーティングに参加しない、急に担当者が変更されるなど、情報共有が途絶えることでプロジェクトが停滞してしまうケースがあります。
オフショア開発では、法令遵守や情報管理に対する意識の差が原因で、思わぬトラブルに発展することがあります。たとえば、個人情報保護や知的財産権に関する認識が甘く、契約内容に反する取り扱いが行われてしまうケースもあります。
ここまで紹介したようなオフショア開発の失敗の背景には、いくつかの共通した原因があります。おもな原因について具体的に見ていきましょう。
オフショア開発において、コミュニケーション不足はプロジェクトの停滞や品質低下を招く大きな要因です。進捗報告が不定期だったり、質問への回答が滞ったりすると、開発側と依頼側の間で認識齟齬が大きくなり、開発プロジェクトに影響する可能性があります。
オフショア開発では、要件や仕様が曖昧なままプロジェクトが進行すると、成果物に大きなズレが生じるリスクがあります。
たとえば、依頼側が「なんとなく伝わるだろう」と思っていた内容が、開発側には正しく伝わっておらず、完成後に大幅な修正が必要になるケースもあります。言語や文化の違いがある環境では、曖昧な表現が誤解を生みやすく、手戻りや納期遅延、追加コストの原因となります。
オフショア開発では、品質管理が十分に行われていないことが原因で、期待した成果物が得られないケースがあります。たとえば、テスト工程が不十分だったり、レビュー体制が整っていなかったりすると、不具合や仕様漏れが見逃されたまま納品されることがあります。
開発拠点によって品質基準や作業プロセスが異なるため、日本国内の基準とズレが生じやすい点も注意が必要です。
オフショア開発では、契約条件が不明確なままプロジェクトを開始してしまうことで、後々トラブルに発展するケースがあります。
たとえば、納期や成果物の範囲、修正対応の有無、支払い条件などが曖昧だと、認識の違いから追加費用が発生したり、納品物の品質に不満が残ったりすることがあります。言語や商習慣の違いも影響し、契約書の解釈にズレが生じることも少なくありません。
オフショア開発では、為替の変動や現地の人件費高騰が予算を圧迫する要因となることがあります。
契約時には安価に見えた開発費も、為替レートの変化によって支払い額が増加したり、現地の経済状況により人件費が上昇し、追加コストが発生するケースがあったりします。こうした外的要因は予測が難しく、長期プロジェクトほど影響を受けやすくなります。
海外では、日本に比べると転職へのハードルが低い傾向があります。その結果、オフショア開発で、開発メンバーの頻繁な入れ替わりがプロジェクトの安定性を損なう要因となることもあります。
担当者が途中で変わることで、業務の引き継ぎが不十分になり、仕様の理解不足や作業ミスが発生しやすくなります。特に長期プロジェクトでは、チームの継続性が重要であり、メンバー交代によって進捗が滞ったり、品質がばらつくリスクも高まります。
ここでは、オフショア開発での失敗を避けるためのポイントをご紹介します。
オフショア開発を成功させるためには、明確な要件定義が欠かせません。
言語や文化の違いがある環境では、曖昧な指示や抽象的な表現が誤解を生みやすく、期待した成果物が得られない原因となります。たとえば、「使いやすい画面」や「柔軟な設計」といった表現では、開発側が意図を正しく理解できない可能性があります。
こうした認識のズレを防ぐには、機能や仕様を具体的に記述し、図やサンプルを用いて視覚的に共有することが効果的です。要件定義の精度が、プロジェクト全体の品質と効率を左右します。
オフショア開発では、仕様や要件を正確に伝えるために、ドキュメントの整備が非常に重要です。
口頭やチャットだけでの説明では、認識のズレが生じやすく、後々の手戻りや品質低下につながる可能性があります。
設計書、機能一覧、画面遷移図、テスト仕様書などを体系的にまとめ、誰が見ても理解できる形で共有することが理想です。また、変更があった場合は履歴を残し、最新版を常に管理することで、情報の混乱を防げます。こうしたドキュメント化の徹底が、トラブルの予防とスムーズな開発進行につながります。
オフショア開発では、定期的なコミュニケーションを確保することが、プロジェクトの成功に直結します。
言語や時差、文化の違いがある環境では、情報の行き違いや認識のズレが起こりやすく、放置すると進捗遅延や品質低下につながる可能性があります。
週次ミーティングや進捗報告のルールを設けることで、状況を把握しやすくなり、問題の早期発見にもつながります。また、チャットツールやオンライン会議を活用し、リアルタイムでのやり取りを行うことで、信頼関係の構築にも効果的です。継続的な対話が、安定した開発体制を支える鍵となります。
オフショア開発では、依頼者自身が責任を持って成果物のレビューを行うことが、品質確保とトラブル防止の鍵となります。
開発を任せているからといって、システム開発会社にすべてを丸投げしてしまうと、仕様の誤解や設計ミスに気づかず、後工程で大きな修正が必要になることがあります。
設計段階から定期的に成果物を確認し、細部までチェックすることで、認識のズレを早期に発見し、手戻りを防ぐことができます。レビューは単なる確認作業ではなく、開発プロジェクトの成功を左右する重要な工程です
ここまで一般的なオフショア開発の失敗・原因・対策を紹介しましたが、ここでは、ベトナムのオフショア開発を活用しシステム開発支援を提供するマイナビTecTus Engineeringの経験に基づき、よくあるケースやその対処法を紹介します。
オフショア開発に限らず、システム開発の依頼において特に発生しやすい失敗は「要件や仕様の曖昧さ」による以下のようなケースです。
たとえば「通知機能」ひとつとっても、以下のような認識の差が生まれることもあるでしょう。
上記のような点を明確にすり合わせず「通知機能」という言葉だけで開発を進めてしまい、後から、依頼者は「プッシュ通知機能も含まれているべき認識」、開発側は「プッシュ通知機能は追加要件の認識」といった齟齬が発生することも少なくありません。
とはいえ、特にはじめてシステム開発を依頼する方は、以下のような方もいらっしゃるでしょう。
そこでマイナビTechTus Engineeringが導入しているのが「要件定義の視覚化」です。
システム開発の仕様は細部まで多岐にわたるため、認識の差を完全にゼロにすることは難しいことが多いですが、わかりやすい認識合わせはスムーズなシステム開発の一助になるでしょう。
オフショア開発を成功させるには、信頼できるシステム開発会社の選定が極めて重要です。最後に、システム開発会社を選ぶうえで大事なポイントを紹介します。
オフショア開発を成功させるためには、開発会社の実績と専門性を事前にしっかり確認することが重要です。
過去にどのようなプロジェクトを手がけてきたのか、どの業界や技術分野に強みがあるのかを把握することで、自社のニーズに合ったパートナーかどうかを判断できます。
開発したいシステムと似た業界や内容の実績が豊富な企業であれば、開発がスムーズに進む可能性も高く、安心してプロジェクトを任せることができます。
オフショア開発を円滑に進めるためには、開発会社のコミュニケーション体制を事前に確認することが不可欠です。
特に、日本語での対応が可能かどうかは、意思疎通の精度に大きく影響します。また、連絡手段(メール、チャット、オンライン会議など)や対応時間帯、連絡頻度なども確認しておくことで、進捗報告やトラブル対応がスムーズになります。
オフショア開発を依頼する際は、見積もりの内容を細部まで確認することが非常に重要です。
金額だけで判断すると、後から追加費用が発生し、結果的に予算を大きく超えてしまうケースもあります。たとえば、開発範囲に含まれる機能や対応時間、修正回数、テスト工程の有無などが明記されていない場合、認識のズレが生じやすくなります。
また、為替変動や人件費の変化によるコスト調整の有無についても、事前に確認しておくべきポイントです。
見積もりの透明性と根拠をしっかり把握することで、予期せぬトラブルを防ぎ、安心してプロジェクトを進めることができます。
オフショア開発を円滑に進めるためには、契約内容を明確にしておくことが不可欠です。業務範囲や納期、支払い条件、成果物の定義などが曖昧なままだと、後々の認識違いや追加費用の発生につながる可能性があります。
特に、修正対応の範囲や、納品後のサポート体制については、事前に細かく取り決めておくことが重要です。明文化された契約は、トラブルを未然に防ぐための強力なツールです。
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